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縮まった、親との距離

一人暮らしを始めて、私は父との距離が、実家にいた頃より縮まった気がしています。

私は一人暮らしを始めるまで、ものすごく悩みました。
父子家庭で育ち、父と二人でずっと暮らしてきた私が「”家を出て、一人暮らしをしたいと考えること自体が、親不孝なのではないか”」と思っていたからです。

私は父がかなり若いときの子なので、父は今もじゅうぶん若いです。まだまだ元気です。
でもやっぱり、父のことが心配でたまりませんでした。

私が家事全般を担当しているので、私が家を出たら、家はどうなるんだろう。
父は掃除がものすごく苦手だから、家は荒れ放題になってしまうんじゃないか。
それに何より、お酒が大好きな父の身体が気がかりでした。
私が何を言ってもお酒はやめないだろうけど、今まで口うるさく言っていた私が家を出たら、もっと飲むんじゃないか・・・。

その心配している気持ちをまっすぐ伝えればいいのに、素直になれない私は父に対して素直な気持ちを伝えられず、八つ当たりしてしまっていました。

「私がこんなに心配しているのに、なんでわかってくれないの」
「お父さんがそんなんだから、私は家を出て一人暮らしする踏ん切りがつかないんだよ」
という感情があふれて止まらず、ひどいことを言ってしまったりもしました。
その後は決まって自己嫌悪に陥り、ひとり部屋で泣いてしまう日もたくさんありました。
あの頃は「東京に出て働きたい、一人暮らしをしてみたい」「でも、お父さんのことが心配」という気持ちが葛藤していて、はっきりいって情緒不安定でした。

* * *

でも・・・
父は私が思い切って打ち明けた、
「東京に好きな人がいるから、私も東京に行って働きたい」
という言葉に、全く反対しませんでした。

「好きなことをできるのは若いうちだから、今のうちにやりたいことをやりなさい。
年をとってから”あの時ああすればよかった”って、思うことのないようにな」
と言ってくれました。
あんなに八つ当たりばかりしていた私の背中を、ポンッと押してくれたのです。

私は「・・・ありがとう」と、一言言うのがやっとでした。部屋に駆け込んで、また泣きました。
でもその涙は自己嫌悪とか怒りの涙ではなく、父に対する感謝の思いから出てきたものでした。

* * *

私が実家を出る当日の朝、私は父に携帯のメールアドレスを聞きました。
実は一緒に住んでいたときは、お互いのメルアドすら知らなかったのです。

その後、駅へ行くバスに乗り、しばらくすると・・・
携帯にメールが届きました。父からでした。

本文は
「メール、届いてるか?」
という、メールでした。
なんだかおかしくて、でもうれしくて、私はまた涙が出ました。
 
* * *

今ではかなりこまめに、父とメールをしています。
実家暮らしをしていた頃は、父とメールすることなんて考えられませんでした。同じ屋根の下にいるのに、まともな会話もあんまりできませんでしたから・・・。

年に数回帰省しているのですが、以前よりほんとに自然に、父と話ができるようになりました。
私が一人暮らしすることを許してくれた父に、これからきちんと親孝行していかなくては。
心配かけないように、しっかり頑張っていかなくちゃ。心からそう思っています。


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